温泉に入るコツ
小学生の頃は銭湯通いをしていたが今でも近所の銭湯が好きでよく行く。入学前頃だったか? 銭湯で固まったことがあった。母親と湯舟に浸かっていると目の前に入ってきたおばさんの乳房が一つなかった。目が釘づけになった。母親に目で質問した。
「なに?」
母親がそっと
「病気かな。あまり見てはいけませんよ」
と小声でつぶやいた。その時のことは今でもはっきり映像として強烈に記憶している。銭湯や温泉では、自分が固まったような思いを周りにさせない、入る時のコツがある。
まずはタオルを首に掛ける。左胸がないので左を長めにして何気なく隠す。タオルは一枚しか持って入れないので下半身は堂々と出ている。もしくは広げて上から下まで隠すこともあるが、後に厄介なのでお勧めは首に掛ける。湯舟に入ると同時にタオルは頭にのせる。広げているとすぐにタオルが湯に浸かってしまうので素早くタオルを頭にのせなくてはならない。
慌てると、ろくなことにならないし、バタバタして不自然で周りの目を引いてしまう羽目になるから、あくまでもタオルは首掛けがベストだ。
しかし、家族連れの多い温泉で一度失敗をしたことがある。湯舟から立ち上がった瞬間、頭の上のタオルを広げるほんの少しの間のことで、距離はあったが目の前の子どもの視界に入ってしまった。子どもの目線が胸で止まる。目がぱちぱちして動けなくなり、びっくりして固まっている。
「なんだ、なんだ」と子どもの心の声が聞こえる。サッと視界から消えるように洗い場に移動した。理解できなくて当たり前だ。昔の自分もそうだったからその子の気持ちが良くわかり、驚かせてしまったと反省。銭湯や温泉ではわざわざ人のことを見る人はいないが、入る前にはほんの少し「周りの人を驚かせないよう」に心構えをする。
「恥ずかしい」とか「見られたくない」という気持ちは全くないので、これからもどんどん銭湯や温泉には行く。日本には素敵な温泉がたくさんありますからね。