第3章 日々是好日 ~アラ還、感謝の心を忘れずに~
心の目で見る
ビデオカメラが出てきてからは拍手がめっきりと減った。カメラを持っているから拍手ができない。
私も息子たちの行事をカメラで撮影してきたから分かることだが、レンズ越しに見るのと実際に眼で見るのとは感動が全く違う。
カメラに収めたいという思いは理解できるが、その場その時の瞬間を眼に焼きつけてほしい。二つの眼でちゃんと見てほしい。
思い出深いシーンは誰にもあって、記憶の中では何年たっても色あせない変わらない瞬間があり、そんな家族の表情や言葉、温もり、香りや空気感も大切な時として心にしまっておきたい。
乳房摘出手術当日が直太朗の運動会だったので、その姿は見ていないがその時の様子を祖母が話してくれた。
「大勢の前で不安だったみたい。いつも活発な子がおばあちゃんにしがみついて何にもしなかったのよ」
運動会には行けなかったが、心の目で見た直太朗の姿は祖母の言葉とともにしっかりと記憶している。心のアルバムに貼りついている。