複婚の世界は、男女が乱婚関係にあり、ある男が妻としている女性には、その男以外にも何人かの夫がいるのだ、それは男も女もあちらこちらの「よばい」で男女関係ができて、それが密接であれば夫婦も同然であり、古代日本では複婚が当たり前となったのである。
従って複婚の古代日本ではフリーセックスが容認されていて、「不倫」とか「貞操」の概念さえもなく、これは、現代社会と違って当時の社会では男女が平等であり、女性は一人の男の所有物でなく、また男性側にも女性を支配しようとする意識もなかったのである。
古代日本の男女の関係は事情はこの様であっても、ギリシャでは男が性文化を愉しんでいたのは確かだが、彼らの妻は家の中に捨てておかれたまま鬱屈しており、男たちは妻よりも奴隷女とのセックスを好み、さらには同性愛も好んだのである。
男性経験のない女子というものは、新枕の床入りを前にしてどんな気持ちになるのだろうか。触れたこともない男の一物が、自分の秘所に差し込まれる恐怖と不安、反面、あれこれ一人慰みをしながら夢想していた期待感とが相混ぜとなって、頭の中が霞がかかった様になるのではなかろうか。
いきなり密林の中から出現し、反り返った玉茎は天を衝かんばかり、鰓を張った巨大な鎌首の先端からは、すでに透明な先走り汁が政子を誘うように淫香を放ち、それを覆う薄皮は桃色に張りつめヌメヌメと照り輝き、その淫焼けした剛茎は青くミミズ腫れした血管を幾筋も浮かび上がらせ、ヒクヒクと脈打つ姿はまさに怒り狂った金箔つきの仁王像そのもので、加えてご神体を推戴する双の宝玉もどっしり鎮座まし、忝くも男の威厳に更なる安定感を与えている。
このお姿こそ、平氏の乱世に怒り狂った仁王像そのものである。そそり勃つ怒茎は天を衝かんばかりに反り双玉は厳かに鎮座まし、遠く古からの尊きお血筋を、忝けなくも今日まで脈々と継いできた源氏の統領、頼朝公のご本尊はいかにも有難く荘厳というほかはない。合掌。
(先ほど見たご一物とはずいぶん違う……なんと、佐殿のご本尊は想像以上じゃ、佐殿の言うとおりじゃ……)
頼朝にとっても、この齢まで男を知らない政子は新鮮な色気が感じられた。男は恥じらう女の頬へ唇をよせ反応を窺うと、女は顔を赤らめたけれど嫌悪や逃げ出す素振りは示さなかった。男はそのまま女の唇に舌を這わせて耳朶を軽く噛んでみた。政子の口元は形よく引き締まって意志の強さを示している。