俳句・短歌 歌集 自然 2023.04.13 歌集「緑葉の里」より三首 歌集 緑葉の里 【第10回】 上條 草雨 大いなる自然と文明遺産に抱かれて この地球(ほし)に住まう この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 連日れんじつの雨天の中に佇むと緑草りよくそう和なごみ足元照らす 名の知れぬ赤紫あかむらさきの柴しばの花そっと近付く躑躅つつじに非あらず 時が経ち太陽系が消滅し伝承化でんしようかして宇宙に居住きよじゆう
小説 『約束のアンブレラ』 【第3回】 由野 寿和 なぜこの場所にいたのか…ずぶ濡れだった少女の靴についた泥の一部は乾きかけていた 「遺体は三十代半ばの女性。薬指には婚約指輪だ。三ヶ月前の九月三十日に失踪した久原真波(くはらまなみ)に酷似している」「にしても失踪届が親族から出されたのは三ヶ月も前です。遺体の腐敗は進んでいるのではありませんか?」「理由は三つある。あの傾斜は地面から二メートル近い場所にあった。地中深くに埋めることで微生物などの影響を軽減し腐敗が遅れた。そして低温環境だ。冬という季節に加えて、この藤山は高山地帯と…
小説 『約束のアンブレラ』 【第17回】 由野 寿和 嘘だ、嘘だ…。なぜ婚約者は死ななければならなかったのか。ことの発端は刑事の「交通事故」? 安物のビニール傘に銃弾のように雨が落ちてくるのを、身を寄せた体全体が感じていた。周囲の気温も一気に冷え込み、全員が体をさするような姿勢をとった。「だから昨日ではなく今日だったのですか。当時の状況を作るために」頭をさするようにして、三好が傘の間から声をひそませる。「毎年、この時期に静岡県藤市の藤山を中心に襲う三日間に渡る局地的な大雨。年の暮れに悪霊や災いを洗い流すという神聖なもので、神々の山だと言…