お前はマムシ 1

ごめんな お前が悪いんじゃないよ

十分にわかっている

お前たちは、ここで静かに、本当に静かに

ひそやかに生きているだけ

だけどね、ここは私のテリトリーなんだよ

たまたま この場所が快適で住みやすかったのだろう

そりゃここにはお前たちの大好物の蛙なんてフルコースだし

生い茂る草は身を隠すのに十分な(とりで)になっているからね

十分にわかっているよ

だけどここはお前たちがいてはまずいんだよ

いくら優しい私とて お前たちを見逃すことができない

私が見逃せば あの腰の曲がったおじいや幼い子どもに

噛みつくだろう? 命さえ奪うだろう?

だからお前たちに出会ってしまえば殺すしかないんだ

お前や仲間たちを殺すたびに私も苦痛を背負っているよ

お前たちが生きるのに不器用なことは知っている

あの黒い蛇を見てごらん なんと俊敏に逃げていくことか

また見事に大きくて太い青大将のように

とぐろを巻いてネズミを絞め殺すことなんてできないだろ

その太短いきれいな模様のある体は

空高く飛ぶトンビさえすぐ見つけてしまう

逃げようとしてトテトテと急いでもまるで遅くて

すぐに捕まってしまう

だからお前たちはその小さな体を強力な毒で守っている

それはそれでお前たちの事情で

毒を持つお前たちとは共存できないよ

少々好物の蛙が少なくても青草が茂っていなくても山へお帰り

お前たちに出会ってしまうと

人間のほうの命を守るために殺すから

また一つ罪を背負うのだから