【前回の記事を読む】詩集「村においでなさい」より三編

第二章 枯れ木

村の小川

その源流は奥の村のその奥の杉の木立(こだち)の間に

ポットン ポットン 数滴落ちる岩清水

それは赤ん坊の叫喚みたいに命の初めのようで

数滴が集まり細い水の流れを作る

それはやっと歩き始めた幼子の一歩のようで

だんだん水の流れを作り始める

それは自己主張をする子どものようで

右や左の谷川水を誘い込み川になっていく

それはあの子の夢もこの子の夢も運んでいるようで

空までも映し出す透明な小川

ここが小人国でガリバーが来たなら

一跨(ひとまた)ぎのほんの小さな水の流れ

むかし昔 この小川で

村の子は遊んだ

さかなを取って 泳いで 戯れて

小川は子どもたちを育てていた

もう今は誰も来ない

小川は寂しいだろうな

あの頃の夢の一滴は

もう大海に流れ着き

どこかに浮遊してしまった

村の小川は透き通り

静かに静かに流れている