五
ようやく〇〇画廊というところで受け入れが叶った時には、すでに沢辺と電話で話してから三週間がたっていた。
ふらりと入った画廊の女性オーナーは、快く若いものらのグループ展を応援したいとのことで、さっそく沢辺に連絡すると、即決してきた。他のメンバーもお前に任せるとの旨話しているという。
費用は参加メンバー各自の折半。
開催は、彼らの大学の夏休み期間である八月に決定した。
実はグループ展が近づくと修作はあっさりと広告会社を辞めてしまった。前から上司とうまくいかなかったのもあるが、グループ展のこともろもろを考えると、仕事が手につかなかった。
毎度美術が絡むと他がみえなくなるというか、美術に夢中になってしまう。仕事などやってられない病が発症する。
どっちみちすぐに代わりのアルバイトをいっかなつなぎにしなければならないことはわかりきっているのだが……それに十中八九生家に戻ることになるだろうから、正社員ではなく自由のきくその場しのぎのアルバイトにしておいたほうがいい、てなこといって、もうとっくに職場がいやになっていただけの話だが……その期間どっぷりとアートな毎日につかりたいし集中したいなあー病だ。
出社するとその足で社長室へ退職届を持っていきそのまま会社を辞めてしまった。いじめていた上司は社長から電話で呼び出されほどなくあたふたと社長室にやってきて、呆けたような、いじめ相手がいなくなるなみたいなすっとんきょうな変な顔をしてぽかんと口を開けたまま修作を見ていた。
上司に何も言わずに、いきなり社長に行ったからだろう。修作が社長に一礼し外に出ると、なかから、君は上司として失格だ、と社長の怒声が響いてきた。修作は振り返りもせず会社を出た。明るい光が修作を包んだ。ああ、清々した、と思わず外に声がもれた。