困った表情を浮かべる彼の顔を見つめながら、あたしはほんの少しの思案をした。

困っている理由がわかれば、あとは早い(と、その時は思った)。困った顔をするお年寄りを放っておくのは、床寄空(とこよせそら)という人間としてなんとなくよろしくない気がする。

「おじいさん! 一緒に探すよ!」

彼はまた驚いて、先ほどよりも大きく目を見開く。時間でいうと、数秒だろうか。無言であたしを見つめてくる彼。

「この子に頼んだところで、そもそも見えるじゃろうか……? いや、しかし、ワシが見えとるしのう……」

そう言うと、彼はまた考え込んでしまった。これでは埒が明かない。

「なんかよくわかんないけど、もう探すって決めたから勝手に探すね!」

そう言って、道をくまなく見ていく。

彼は、()め息をついて、

「恩に着るよ、お嬢さん」

と、なかば諦めたような声をかけてきた。

【前回の記事を読む】「気づくと、私は森にいた。」聞こえてくる感情のメロディー