Chapter・3 歯車と選択

時計を見る。午前二時。まだもう一眠りできる。しかし、どうしたものか、眠れない。仕方なく、一杯の水を飲むことにした。

「あの本、最後まで読みたかったなぁ……」

しかし、夢なのだから覚めても仕方がない。夢は覚めるものだ。

完全に目が覚めてしまったので、本でも読むことにした。とある作家によって紡がれた、“世界の終わり”へ旅に出るのだ。本には、不思議な引力がある。その引力には敵わない。そうして、世界を(時には宇宙までも)旅するのだ。

読み始めてから一時間くらいしただろうか。ポツポツという音が始まり、さーっと雨が降り始めた。心地いい音だ。

雨のせいか、気温が下がる感覚がした。ココアでも飲むことにしよう。インスタントココアを作り、のんびり飲む。雨音をBGMに読書とは、なんとも贅沢である。

「良い音……」

ふぅっと息をついて、ココアを一口。そして、また読み進める。

気づけば一時間が経っていた。さすがに寝ないと、仕事に支障が出てしまう気もするが、目が冴えてしまって眠れない。

ココアをもう一杯作り、ストーリーを進め直す。ちょうど、佳境に入るところだ。ここから先に入ると、もう誰にも止められない。

どんどん読み進める。しかし、そこは長編。なかなかラストにはたどり着かない。長編はある種の長旅である。その長旅を終えるのは、まだ少し先になりそうだ。

いつの間にかBGMは鳴り止んでいた。ココアも飲み干していた。旅路も良い頃合いで、眠気を感じ始めた。私は、栞を挟んで本棚へ戻すと、布団の中に潜り込んだ。ぬくもりに包まれながら、新たな旅路へ向かうのだった。