Chapter・3 歯車と選択

コーヒーの良い香りが漂う。

「さて、まずどこから話そうか……」

「僕の名前は、狭間(はざま)(のぞむ)と言います。あなたの名前も教えてもらえますか?」

「私は、瀬戸エドワードだ。私のことは、エドワードと呼んでくれ」

そう言って、彼は微笑んだ。名前から、どうやら二ヶ国以上のルーツを持つらしいことはわかった。しかし、それよりも解決したいことがある。

「えっと……。エドワードさん?」

「なんだね? 望。なんでも聞いてくれたまえ。それから、さんづけは不要だ」

なんだか、昔読んだシャーロック・ホームズの主人公、ホームズの話し方に似ているのは気のせいだろうか? 話し方が独特だ。

「あの、まずここはどこなんですか?」

「ここは“夢と現実のはざま”というところだ。君は、あの白猫のチャーリーに導かれてここにいる。ここは、その日飾られた“空”というものによって決まる。それは、僕らには扱えない。ロジャーというおじいさんしかわからないし扱えない。あの中央のパズルが、その“空”と呼ばれるものだ。だから、決して触ってはいけないよ」

そう言って、彼は僕が先ほど見ていたジグソーパズルを見つめた。

「わかりました。しかし、僕はなぜここに導かれたのでしょうか? 理由がわかりません」

そう彼に問いかける。

「そうだな……。そこは、君の読書への貪欲さをチャーリーが見抜いたのだろう」

そう言うと、エドワードは少し困った顔をした。なんとなく、彼は何かを隠している気がした。