「何が起きたのだ、事故か」

「違います。今、火星で人工の物体が発見されました。しかも巨大な物体です。とにかく大至急本部に来てください」

「エー、君何をバカなことを言っているんだ、本当に山田君かね」

「今、こちらは大混乱です。火星基地から送られてくる映像で、次は何が起きるか見当もつきません。車をそちらに向かわせました。一刻も早く来てください」

「科学技術庁には連絡入れたか」

「まだです。本部長がこちらに来てからにします」

本部長も電話から伝わる興奮に驚き本部に向かう。火星の現場に戻る3人は外部活動用の気密スーツの中で、自分の心臓の鼓動だけがドクドクと聞こえる。黙って歩いていたケンが突然、地球本部から次々と入る連絡に、大きな声で「うるさい。こっちだってどうなっているのかわからないんだ」と、怒鳴り返した。

地球と火星の現在の位置だと電波が往復するのに10分近くかかる。それでも早い方であるが時差の分だけストレスが溜まっていく。ヘルメットにつけたカメラによって映し出される映像に、本部も興奮が隠せない。思い思いの質問に3人の隊員の頭はフリーズ状態で何も答えられない。

ケンとソヨが滑走路を山に向かって歩いてくると、ケーブルに沿って歩いてきたアヤと合流する。ソヨが「隊長怖いわ」アヤも「私もとても怖い、何か出てきそうだわ」とつぶやく。ケンも「俺だって怖いが、行くぞ」と気合を入れる。驚天動地というか天地がひっくり返るような驚きが3人の恐怖を包む。

恐怖と驚きと好奇心の中を、何かに導かれるかのように進む。道にそって山に向かってしばらく進むと、切り立った山のふもとにペトラ遺跡のような門の一部が見える。門の入り口を守るかのように、縦5メートル横幅10メートルほどの四角い一部が砂に埋もれた巨岩が、行く手を阻むかのように立ちはだかる。

この巨岩には何か地図のような大きな絵が描かれているが、風化が激しく、その上に砂ぼこりがかぶり、はっきりと読み取れない。巨岩を避けるように石の後ろに回り込むと、ギリシャの神殿風のまさしくペトラ遺跡そっくりの門があり、その奥にかまぼこ型の大きな入り口らしきものが見えてきた。

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