第1章 巨大隕石落下
人類の祖先がまだネズミのような下等な哺乳類としてうごめいていた頃、爬虫類の恐竜属は全盛期を迎えていた。今から6600万年前、恐竜全盛期の白亜紀最後の時期である。
「カンカンカンカン……」町中に激しく警戒警報が鳴り響く。
「緊急事態発生、緊急事態発生」全土に緊急事態が発令された。
「全員衝撃に備えろ。間もなく巨大隕石衝突、震度マグニチュード10以上、衝突まであと60時間」
およそ7000万年前より安定した温暖な気候が続き、地球上の生命は繁栄を謳歌してきた。豊かな文化を作り上げ、今日の平和で幸せな日々が明日もくるものと、疑うものは誰もいなかった。そんなある早春の日、巨大隕石が突然地上に落ちてくる。しかもその原因が自分たちが信じ自分たちが築き上げてきた、科学の結晶である宇宙科学がもたらしたのである。
4日前に始まった突然の緊急事態宣言が発動されて以来、市民が大混乱する中報道は続く。
「地下道やトンネル、頑丈な建物に避難してください。頭はヘルメットやクッションで覆うように準備してください。急いでください」
「海岸近くにいる方は内陸部に避難してください。最大100メートルを超える津波が押し寄せます。避難避難……」
アナウンサーが冷静を装って報道するが、声は上ずり目の焦点が定まっていない。
「カンカンカンカン……」と警報が鳴り続ける。
町の中は大混乱と化し通信機能は失われ、人々は流言飛語に惑わされながら右往左往するばかり。衝撃に備えろと言われても、どこに避難することもできず、家族を探し求めるもの、地下に逃げ込むもの、食料の買い出しに走るもの、高台に逃げるもの……。
政府からの指示は何も出ない、政府としてはもはや出すべき指示がない。航空宇宙局の管制室では、
「隕石が地上に間もなく落下します。落下を止める手段はもう何もありません」
「落下地点はどこだ」
「落下時間の正確な時間は何時だ」
管制室の大画面には迫りくる大隕石の映像が映し出されている。静かにゆっくり回転しながら徐々にスピードを上げ、日増しに大きくなってくる。