第2章 火星人の遺跡発見
ケンは火星基地を通じて、地球本部に第2報を入れる。
「火星に巨大人工物を発見。規模は1万平米程と思われる」
地球本部では「火星の地上観測隊より、1万平米もの人工物を発見と言ってきています。どうしますか」と、この報告をいまだに誰も本気にしない。あまりにも報告内容が大規模で真実味を帯びているので、火星基地の全員が結託してフェイク情報を作り、我々をからかっているのではないかと思い込んでいる。
それどころか「調査隊員は誰だ。そんな冗談のために連絡なんかしてくるなよ、隊長は誰だ、こんなフェイク情報を流して遊んでいると後で処罰されるぞ」と、ぶぜんとする始末である。
「本部長に連絡入れますか」
「バカ、この夜中にこんな連絡を入れたらド叱られるぞ」
「ですよね」
地球本部では10分から20分ごとに入ってくる火星からの報告に、それにしてもこのフェイクうまくできているよなと感心している。
一方、火星では隊長のケンが扇の端から山のふもとに続くコンクリートのような突き固められた道が、薄っすらと積もる砂の下にあることを見つけた。つま先で赤っぽい砂を払いのけると飛行機の誘導灯が現れてきた。胸の鼓動を抑えることができないまま、石をコンクリートで固めたローマの石畳のような側道を進む。
ソヨが「これ飛行機の誘導灯、滑走路みたいですが」と、尋ねるがもはやケンは口もきかない。飛行機の滑走路であることは明白である。こんな大きな滑走路を造った火星人とは…と恐怖がにじんできた。いや宇宙人の基地かも知れない。頭の中でぐるぐると不安が回る。
地球本部より冗談や冷やかしの連絡が次々と入る。何度もフェイクではない、事実だと言っているがもう何を話しているのか耳に入らな。地球と火星との連絡ではタイム差が10分近くある。今考えていることと地球からの質問との食い違いで思考が混乱し気が狂いそうである。
地球本部でも次々と入る映像に、これはフェイクニュースとは違うぞ、本物ではないのとやっと気付く。
「緊急事態、緊急事態」と騒然となる。
「全員招集しろ、本部長、本部長を呼んでくれ」
日本ではまだ午前4時の真夜中である。本部長宅に電話がつながる。
「もしもし…」
ねぼけまなこで電話に出る本部長。
「本部長ですか、山田です。大変です大変です。すぐに本部に来てください」