四、現代は、戦前と大きく異なり、大衆がもてはやされ、大マスメディアが大衆を煽り、誘導する。昨年11月に行われた米国大統領選挙は、東部のマスメディアが挙こぞって反ブッシュを煽り、世界的に煽動した為に、ブッシュ敗退の国際予測すらあったが、結果は大違い。国家の安定基盤層である保守層がしっかりしていた。このように、余程、透徹した眼を持たないと判断を間違えてしまう時代となっている。

五、現代文明論の先駆者、スペインのオルテガは、著書『大衆の反逆』の中で次のように述べている。「現代は大衆の世界だと言われ、大衆がもてはやされておるが、大衆というものは大事なものではあるけれど、大衆が時代を創るということは出来るものではない」。

六、さて、樹木でも枝葉が繁茂し過ぎると枯れ死にする。それを防ぐには、常に剪定し、風通しをよくし、日照りに注意し根固めが必要である。これは、どうやら人類の歴史、文明社会の通則でもあるらしい。

どの文明もある程度栄えて繁茂が過ぎると、必ず風通し・日当たりが悪化し虫がつき、やがて伸びが止まるばかりか、遂には根腐れして衰亡している。日本の現状を見れば自明である。これにどう対処するか、オルテガは「文明をいかにして簡素化して根源に復帰するかということが、文明の盛衰の岐路である」と言っている。

七、わが国も、伝統の断絶が発生しており、このままであれば、伝統も、日本も必ず衰微する。既に日本の社会に於いては歴然と亡国現象が顕現化しつつある。それを防ぐには、簡素化、根源の歴史に帰る、自己に帰る、伝来の日本に帰る、ということではないか。それには、樹木の剪定と同様に、人間精神・生活態度を簡素化することではないか。

戦後の日本人は、長くこの風土に相応しく生き抜いてきた先祖の生活態様と大違いとなり、矛盾が生じている。戦後の欧米化の度が過ぎたということに尽きると思われる。