白に赤い花柄のブラウスの女
玲子について少し泳いだが、私は潜りが駄目で技量の違いを自覚して磯遊びに転じた。玲子は1時間海に入り、ウニを60個取り私は、それをせっせと割って、実を取り出し持参した瓶に入れ5個に一杯になった。
潮が少し満ちて来たので、陸地を目指し引き揚げることに。ウニの入った瓶をボートに乗せて途中潜ったり、珊瑚を持ち上げたり、熱帯魚を追いかけたり、時にはウツボに脅かされハシャギ、ジャレアイながら、海岸に戻って来た。
途中、細かいことは覚えていないが、これまでの出来事を話し、これからのことを漠然と話した。玲子は不意に大きな声と手を大きく広げる仕草で、「奄美、最高に楽しい」と叫び私は「……」無言。さらに玲子が「楽しい奄美最高」と言うので「サイコウ……」と返し「真、私を追ってくる。追いつける」と言われ必死に追ったがギブアップ。
ここで私が「もう心、大丈夫」と聞くと玲子は「完璧。奄美に癒されて何でも受け入れられる。ここは何か不思議なところだね」と言うので「それは俺の影響も大きい……」と返すと「奄美か真か分からない」というので「俺は断然、玲子効果」と交互に言ったことは覚えている。
また太古からの自然が残る金作原探索も思い出に残る。奄美(大島)は、鹿児島から約300km離れた南海の洋上にあり、古代から綿々とつながる豊穣な時間と亜熱帯の光の中にある。街にはビルディングが林立するが、一歩中に入れば金作原に代表される深い森がある。
そこには人が生まれる遙か前から自然が育てたであろう、太古を思わせる木々が繁り、生きた化石といわれる巨大なヒカゲヘゴがあり恐竜の時代にタイムスリップしたような気分になる。
玲子とこの森で遊んだ。ここで「私が、この森にはケンムンと言われる妖精がいます」と言い、玲子が「本当にいるの。私は絶対に信じない」と答えるので「信じる者は救われます」と返すと突然森に「キキキキ、シュール、シュール、キキキキキキキキ、キキキキ」との叫び声が聞こえ、玲子は私の後ろに隠れた。
同時にルリカケスが「ガーガガッガ ガーガガアガガーガガッガ ガーガガアガ」とけたたましい声を出して鳴いたので、驚いて逃げ出し穴に落ちる、というハプニングもあった。
「怖がりお姉さん、海の天才も陸に上がればカッパですか?」と言うと拗ねた。私は日頃のうっ憤を少し晴らした。それにしても拗ねた玲子も可愛かった。
それからも大人二人が雨宿り出来るほど大きく成長するクワズイモ。「となりのトトロ」でトトロが傘にしていた、あの植物で遊ぶ。さらに「キョロロロロ…キョロロロロ…」という可愛いらしい鳴き声が特徴的なリュウキュウアカショウビンも見た。玲子はこの口真似をして「キョロロ…キョロ…」と言った時は、優等生にもお茶目なところもあるんだと……。
そして、金作原散策の最後に玲子は「世界は広いね。最初から壁を設けず、何でも受け入れる気持ちが大事なことを教えられた」と言ったが、これを言わせるほどに奄美の森は神秘的だった。
このように私たちは色んな経験をして、幾つもの思い出の場所が出来た。もう一度、玲子と一緒に行きたいと……。