【前回の記事を読む】【SF小説】隕石落下で廃墟に変わった地球…最後の希望は?
第1章 巨大隕石落下
隕石衝突直前に地球を脱出した宇宙船3隻は、このまま月に向かうべきか地球軌道にとどまるべきか判断に困った。搭乗員は8名ずつ24人、食料も搭載されているがせいぜい1年分ほどでしかない。月に行くのも絶望的、かといって地球に帰るのも絶望的という八方塞がりの中、地球軌道を回りながらしばらく様子を見ることとなった。
2機は地球高軌道上で待機することを決めた。プロミスだけが月基地を目指したが、月軌道上に到着したものの月面に降りてしまえば月を飛び立つだけの燃料はもはやない。月基地の食料事情がわかるにつれ、プロミスは月に降りるのか再び地球に向かうのかのジレンマに追い込まれる。
月基地は少なくとも2年以内に地球が回復して、食料と燃料の補給がなくては生き残れないことになる。
火星基地の住民は現在36名。半年前に80名の住民が一時帰国したばかりで、今地球帰還ロケットは1基のみしかなく6名が帰還することしかできない。
火星基地の食料と燃料は、基地内でバイオによる食糧肉の生産ができ、燃料も小型の原子力発電と太陽光発電であるため、最大400人の住民が数年間は問題なく居住を継続することができる設備があり、生存には多少余裕がある状況である。
火星から地球を観測し続けているが、地球を取り巻く噴煙は収まることなく灰色のままで好転の様子はない。地上では激しい雷が発生しているらしく、火星からもその光を垣間見ることができる。
隕石が落下して10日目が過ぎた火星では、地球の変化の様子だけが話題となっている。
「どうだ少しは収まったか」
「いえ、まだ全然変化ありません。回復の兆しはまったく見られません。それどころか地殻変動により各地で火山活動が激しくなり、大型の火山噴火が始まったようです」
「海はどうなっているかな」
「時たま太平洋の真ん中あたりが薄っすら見えますが、青いはずの海が黒くしか見えません」
「え……太平洋が黒くなったの、信じられないな」
「そうです。海の中の生物も生存の可能性はほとんどないかと思われます」