【前回の記事を読む】隕石落下は序章に過ぎなかった!? 恐るべき生命絶滅のシナリオ
第1章 巨大隕石落下
4月17日(恐竜の日の祭日)8時15分落下。
彼らがいる南極からユカタン半島までは、約1万2千キロメートルある。音の速さは時速1225キロメートル。
衝撃音が9時間ほど経った頃やって来た。鼓膜が破れるような大音響と、ものすごい衝撃波が襲ってきた。
木々をなぎ倒し耳をつんざき、衝撃波が直接当たった生物の眼球は飛び出し耳鼻口から血液が噴き出す。道を埋め尽くしていた自動車が木の葉のように宙に舞う。そして一瞬のうちに真っ黒な雲の中に入ったかと思ったら、今度は猛烈な爆裂音に続き成層圏にまで届くきのこ雲が覆いかぶさってくる。
立っている全ての物が縦方向に1メートルも突き上がり、飛びあがる衝撃に襲われたかと思ったら、天地がひっくり返ったかのように、全てが横倒しになる。横波が次々と襲いかかる地震が10分も続き、地面が真横に3メートルも口を開き波打つように動く。その後もゆらゆらと動きは止まらない。
大陸そのものが揺れ動いているのだ。地上にあるもの全てが、まるで虫けらが自動車に踏みつけられたかのように破壊された。地球全体が太鼓を打ったかのように振動しているのだ。
堅固なビルがまるで積み木のようにばらばらと崩れ落ち、全てが倒れた、町は一面、一瞬のうちに廃墟に変わり、森も牧場も町も灰色の廃墟と化した。噴石が雨あられと降り注ぎ、降り始めてから2時間たっても収まらない。
火災が何十か所で発生し都市も森林も埃と煙が蔓延する中、その数時間後には地面がめくれあがって押し寄せてきた。地表剥離の地波がまるで海の津波のようにやって来たのである。さらにその後ろから200メートルにも及ぶ真っ黒な津波が内陸100キロメートルにまで押し寄せ町に覆いかぶさり、引き波と同時に地上にある全ての物を海中へと引きずり込む。
次々と襲いかかる津波に襲われ、地上の人工物は何も残っていない。瓦礫だけが延々と広大な大地を覆っている。地下に逃げ込んだものも山岳に逃げ込んだものも、その全てが大地と海の中に呑み込まれ、地上を動くものは何一つない。
風の音だけがむなしく響き、生命は絶滅したかのような廃墟に変わった。
宇宙に脱出したグループにもその災害はおよんだ。低軌道で回る宇宙船は、衛星軌道まで飛び出した噴石に当たり次々と爆発し墜落していく。この噴石の一部は月にも届き、細かな石があられのように降り注ぐ。地球の周りには土星の輪のように噴石によるリングが回り始めた。
月基地は地上に出ている全ての資材を地下にしまい込み、地球からの噴石を地下深くで逃れることとなった。この時、月面基地は地表から地下に移され月面には何も残らないこととなった。碧いルビーのような地球は、成層圏まで覆いつくす噴石と噴煙に覆われて灰色の星に変わり、美しい地球の面影はもはやどこにも残っていない。
地震と地表剥離による土石流爆発により瞬間風速200キロメートルにも及ぶ噴石の中でも辛くも生き残った生命も、その後襲い掛かる粉塵と暴風雨にさらされ、水も食料もない中バタバタと倒れていった。太陽の光が届かなくなった地球の気温は30度も下がり、急速な低温下によりわずかに生き延びた植物もかれはてることになった。
海洋生物もその90%が死に絶えたが、深海に住むわずかな小動物だけが生き残るだけとなった。地上では地中や大木の中にいた昆虫や小動物がわずかに生き残った。小型の鳥類もユカタン半島の地球の裏側に当たる、暖かいジャングル地域に住む種族だけが、やはりわずかに生き残ることができた。
今でいうオーストラリア南部地域に当たる、奥深い大陸のわずかな区域だけでしかなかった。火星基地と月基地から地球本部に連日空しく打電が続く。地球本部応答願います。地球応答願います。誰か誰か応答願います
「火星基地には地球の超高度を周回していた宇宙船より、低軌道を周回していた大型宇宙基地居住コロニー搭乗員50名が、地球から宇宙に飛び出してきた噴石にあたり爆発、航行不能に陥った」
と打電が入るが救助のしようがない。居住コロニーにいた隊員の24名が2機の船外宇宙船で脱出を試みるが、その内の1機は慌てふためいた隊員が船体との切り離しに失敗して、入り口のハッチが破損して機内の酸素が漏れてしまい全員が死亡。
もう1機は月に向かって無事に発進したが、地球から飛来した隕石のかけらに当たって航行不能になった人工衛星に接触して、コントロールがきかなくなり暗闇の中に消えていった。そして翌日には、コントロールを失ったコロニー自体が26名の隊員もろとも灰色の地球にのみ込まれてしまった。