【前回の記事を読む】「約束、ゆめゆめ忘れるでないぞ」美しい白蛇の道ならぬ恋

蛇恋

見殺しにしたも同然であった。懺悔するようにつぶやく男の話を、女は男の手を温めながら無言で聞いた。見ず知らずの女だというのに、男は誰にも吐露してこなかった弱音を語り聞かせた。いや、知らぬ仲であるからこそ、そのような話をしてしまったのかもしれない。女はまた、男の悔恨を同情しつつも、頼ってくれたことがどこか嬉しい心持ちになり聞いた。

一通り話し終えると、その所業を恥ずかしく思いながら、

「それで、あなたは一体……」

と男が尋ねた。

「行くあてもない旅人でございます。一晩宿をお願いしたいのですが……」

こんな綺麗な人を泊めて、間違いがあってはいけない。そう断ろうとするのだが、是非にと折れない女。放っておいたら雪の中に消えてしまいそうな儚さに、男はついに根負けしてしまう。

一晩という話ではあったが、不器用な男を放っておけなかったのか、はたまた行くあてがないというのは本当であったのか、女は男の身の回りの世話をしながら、なかなか出て行こうとしない。器量もよく、また甲斐甲斐しく世話をしてくれるわけなので、四十九日の法要が終わりやっと自分の先のことを考えられる状態になった男は、その美しい女と暮らしたいと思うようになっていた。

そのように告げると、女は恥じらいながらも小さく首を縦に振った。

その晩、男は女を抱いた。狂おしく、愛おしく、その体に己を刻み込むように激しく。白く艶やかな体を味わい尽くした。

……女は男の妻になった。