「やはり、力ずくで連れ帰るしかねえか」
言うなり、ガマガエルは跳躍した。
恭子との距離を、一気に詰める。
ギンッ!
眩い閃光が、辺りを一瞬明るくする。
男のナイフを、恭子のナイフが受け止めたのだ。
普通の女の子だったら、この一撃で傷を負っただろう。いや、例えナイフで防いだとしても、ナイフがはじき飛ばされていたはずだ。
日頃の特訓の成果だった。
そしてその一撃で、恭子は感じ取った。この男が殺意を持って攻撃している事に。
鋼同士の衝撃で生じた閃光が、その一撃の強さを語っていた。
「お前の祖母は、先の大戦でも手こずった日本の最終兵器だ。我が国のモノにならないのなら、殺しても良いとの指令を貰っている。手加減はせぬぞ」
祖母? おばあちゃんの事?
そんな思考時間も許されない程、ガマガエルは次々と刃を奔らせる。男が放つ様々な角度からの攻撃を、恭子は全て捌いた。
「知っているぞ。お前の能力は、肌に直接触れなければ発揮されない事を」
確かに男の肌が露出している箇所は何処にも無かった。身体に触れさせる隙も時間も与えない。
「そらそら、避けてばかりでは、いつか捕まるぞ!」
恭子は相手の攻撃を、目では無く気配で読んでいた。そうで無ければ暗闇の中、暗視ゴーグルを着けたプロの攻撃など躱せる訳は無い。
――私のスキルを利用しようとする大人は嫌い――。
恭子は次第に怒りと興奮に包まれていった。