【前回の記事を読む】日本人の多くは不健康?WHOが定めている「健康の定義」とは

第1章 ヒューマンケアの実際

第1節 健康と日常生活からヒューマンケアを知る

2)健康状態の理解

社会生活を送っている場合、「健康の維持・増進」を目指した状態だが、事故等によるケガや急な病気の場合は「急性期」として迅速で的確な医学的処置が必要である。急性期から回復し元の状態に戻る場合もあるが、そのまま「慢性期」へ移行することもある。

また、ケガや病気から回復していく段階は「リハビリテーション期」として回復を促進する関わりが必要である。このように健康状態に沿った適切な対応を知ることは、自分自身の健康へのケアでもある。健康状態として学ぶ時期には、「健康の維持・増進を目指す」、「急性期」、「慢性期」、「リハビリテーション期」、「終末期」がある。

(1)健康の維持・増進を目指す

なんらかの疾病の発症もなく、健康的な生活を営み健康を維持・増進する、あるいは疾病を予防しようとする時期である。対象となる人は、健康ニーズはあるが受診に結び付いていない人、近い将来の健康障害が予測される人、健康な人々など様々で、健康の維持・増進に向けた活動は誰でも対象者であるため、幅広い範疇である。

「あらゆる健康レベルの人々が対象」であるその関わりには、日常生活に気を配ることで予防できるとされており、リーベル(H.R.Leavell)とクラーク(E.G.Clark)の提唱によると5段階の健康レベルを一次予防から三次予防に分けている。

内容は、一次予防は「健康増進」と「特異的予防」で、「健康増進」は健康を維持・増進できるように生活の中で実践し、「特異的予防」は生活習慣の改善や見直し、予防歯科、予防接種といった行動で発病を予防することである。

二次予防は「早期発見・早期治療」で、健康診断や検診の受診で疾患を早い段階でみつけ治療を始めることである。

三次予防は「疾患による障害を最小限にすること」および「リハビリテーション」で、残存能力の活用や機能回復により生活の質を向上させ、社会復帰支援や再発予防に努めることである。健康の維持・増進を目指す看護の実践の場として教育の場では「学校保健」、企業等であれば「産業保健」、都道府県あるいは市区町村であれば「公衆衛生看護」である。

さらに、健康の維持・増進を目指す人たちへの支援について確認する。

□生活習慣病対策

2008(平成20)年4月より、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の概念が導入され、特定健康診査・特定保健指導が実施されている(表:特定健康診査項目)。

[表]特定健康診査の検査項目  e-ヘルスネット(厚生労働省)

特定健康診査は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、保険者が実施することになっており、基本的な項目以外の詳細な検診の項目については、医師が必要と認めた場合に実施される。俗に「メタボ検診」といわれることもある。生活習慣病といわれる高血圧、糖尿病、脂質異常症等は初期に症状がないために自覚症状が認められず、症状が進行してしまったり脳卒中や心臓病などの症状が起きてから見つかる場合もある。