【前回の記事を読む】「日本を健康先進国へ」保健医療のパラダイムシフト、5つの項目とは

看護ケア実践と倫理の関係について知る

2.職業倫理と看護ケア実践との関わり

看護職者が看護ケア実践において拠り所としてきた看護倫理には「ナイチンゲール誓詞」があり、看護職の専門団体が示す倫理綱領といった職業倫理がある。

看護倫理について松木によれば「看護職者が患者に見合うより良い看護を実践する上での普遍的な規範である」と述べている(松木、p.73、2010)。さらに「看護倫理は生命倫理と職業倫理を包括してその人によりよい看護行動を見出していく歩みの指標である」と説明していた。ここでは、職業倫理の内容から看護者の実践との結びつきを考える機会とする。

1)職業倫理

職業倫理は、専門職集団において倫理綱領として明示され、社会的役割あるいは責務の遂行が求められている。倫理綱領といった文書化された規範内容を備えた職業であるかどうかは、専門性の高さとも関連する。

それぞれの職業集団が自身の専門性に応じた職業倫理について、各自が内容について自覚し、その規範に基づいて判断、行動をするときに専門性が発揮され、同時に専門外の人々への保証と信頼の獲得につながる。

また、倫理綱領の内容を理解し行動化することは規範に則った実践が行われることであるため、法的問題を回避できることにもつながる。そのため対象である患者を守り、専門職集団を守ることでもある。これは倫理が自発的な内的規範だといわれる所以である。

職業倫理として、『医の倫理綱領(日本医師会)』『歯科医師の倫理網領(日本歯科医師会)』『薬剤師綱領(日本薬剤師会)』を以下に紹介するので、内容を比較することでそれぞれの専門性の理解を深めて欲しい。