私の髪は、後ろの肩甲骨の下くらいまで長かった。「どうぞ……」彼は私の顔に近づき、両手で私の髪を耳にかけたり、はずしたりし、髪を手ですいたり撫でたりした。私はジッとして、微笑んでいた。「僕の可愛いお嬢さん」そう言って、彼は私の頭を撫でた。「今日は、もうお帰り。悪いが、次は十二月の二十日に来て欲しい。ちょっと色々あるんだ。ごめんよ」「わかったわ」私は、微笑んでドアを出た。やがて、秋の風が吹き、木々の…
新着記事一覧
-
小説『愛』【第21回】高見 純代
私達は親の愛を得られなかったからこそ、真実の愛を求めている
-
小説『目から鱗が落ちる話』【新連載】村田 翠
ベツレヘムで生まれた神の子ではなく「ナザレの人」のお話
-
小説『アリになれないキリギリス』【第15回】上條 影虎
天才ではないがゆえに人より努力し、それを勝ち取った。
-
小説『百年後の武蔵野』【第15回】栗田 哲也
彼に手紙を書きたい…でも住所を兄に聞くのは絶対にイヤ!
-
エッセイ『レックレス2012』【第10回】やっちゃん
さすがに今日買った煙草代は自分では払わなかったよ。
-
エッセイ『多様性に溢れる悠久の国 何でもありのインド』【第13回】上村 英生
他人が咥えた体温計を消毒液に浸けるだけで、次の人に使用する
-
エッセイ『「死」から「生」へ』【新連載】三田 徹
生え抜き、プロパー、天下り…会社は大きく揺れ動いていた
-
小説『ショー失踪す!』【第8回】コミ―
右手を見せて「血が出ている」と訴えてくる。溜息しか出ない…
-
小説『山田錦の身代金』【第36回】山本 モロミ
そばつゆを作るのがバカらしくなる…釜揚げ蕎麦の破壊力
-
エッセイ『ソートの人生 喜びも怒りも、悲しみさえも、笑え』【第8回】伊藤 信也
尊敬していた陸上部の先生が、ある日下着泥棒で捕まった…
-
エッセイ『音楽のジャポニズム!~考証・三浦環』【第17回】田辺 久之
朝ドラ『エール』三浦環…瀧廉太郎との「恋愛の真相」とは?
-
エッセイ『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』【第13回】棚橋 正夫
「そんなこと知らない。まだ、生きてるわ」認知症妻の辛い言動
-
ビジネス『補助金の倫理と論理』【第22回】庄司 進
補助金の大問題…「復旧資金です」が現場を混乱させた深い理由
-
評論『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』【第17回】野坂 きみ子
「私、発達障害ですか?」クリニック訪れた人の衝撃の実生活
-
俳句・短歌『歌集 秋津島逍遥』【第52回】松下 正樹
歌集「秋津島逍遥」より三首
-
俳句・短歌『歌集 星あかり』【第32回】上條 草雨
歌集「星あかり」より三首
-
小説『薔薇のノクターン』【第20回】高見 純代
子宮頸癌じゃなくて、子宮体癌の検査をしなくちゃ意味がない…
-
小説『人間関係貧乏性』【第2回】小川 涼佳
ホームに降りた母が発車時間までに戻れず、新幹線のドアが…
-
小説『愛ラブ猫 I Love Neko』【第5回】山本 十夢,谷口 富
大きな壁…「65歳以上の人は猫の里親になることができない」
-
小説『緋色を背景にする女の肖像』【第45回】阿佐見 昭彦
まさか!これでふりだしに逆戻り…追い続けていた絵画の謎