【前回の記事を読む】男性になった元女性の初デート!…衝撃の告白に「知ってた」!?


新しい性と希望

手術から一年半後の夏、僕は初めて母と話したいと思った。それは優花ちゃんや彼女の影響が大きい。この一年半、がむしゃらに生きて少し疲れていた。僕は母の携帯に電話をかけた。数回のコールで母は電話に出てくれた。その時の母の声は嬉しそうだった。

「もしもしどうしたの?」

「うん、何となく。今度の連休に帰ろうと思って」

「本当? 良かった。あのね、お母さん、あんたの手術を反対したこと後悔してるんだ。神様はね、あんたが手術をすることを許していたんだよ。あんたの苦しみを知ってたから許したんだと思うよ。だから、そのことは忘れないでね。ここまで本当によく頑張ったね」

僕の顔はほころんだ。そして精一杯元気な声で言った。

「そんな気がした。きっとこの人生にも意味があるんだよ。あとさ、自分やりたいことがある。この経験を誰かに伝えたい」

「強くなったね。あんたならきっと大丈夫だよ」

「……ねえ、自分、結婚できるかな?」

僕の夢、母はそれをどう思っているのだろうか。ずっと聞きたかったことだった。

「大丈夫だよ、あんたが結婚できるようにお母さん一生懸命祈っているからね」

「うん」

ありがとうって言いたかった。ねえ、おかあ、僕はもう大丈夫、これからも頑張れる。そう心の中で母へ言った。そしていろいろな話をして僕は電話を切った。あの日、僕の置かれていた状況はあまり良くなかった。現実の残酷さに僕は潰されそうだった。それなのに胸が満たされている。僕、今なら言える。

僕は横関恵子と横関ハルのことを愛している。そう思った瞬間に体の内側から心が満たされた。もう僕は依存や嫉妬には負けることはないだろう。ようやく、この長い苦しみに終わりが来たのだ。窓に映る光が眩しい。僕の夢は、アリエルが人間になるように、野獣が王子様になるように、僕が男に生まれ変わり好きな人と結婚をすることだ。