俳句・短歌 句集 2022.05.20 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第64回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 下の子の手のひらに汲む冬の水 どんどの火闇より人の来て囃す 大寒や木々は影おき立ち尽くす
小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『空に、祝ぎ歌』 【第29回】 中條 てい 「おたく、あの子を捨てた親のことを何かご存じなんですか」—カーシャの名前を出すと、男は「まちがいねえ…どこにいる?」と… ジョジョの熱心な聞きこみに、ずっと用心していた店主もようやく口を開いた。「おたく、カーシャを捨てた親のことを何かご存じなんですか」「え、カーシャ! おい、そいつ、カーシャっていうのか」ジョジョは窪(くぼ)んだ目を丸く見開いて聞き返した。「いや、本当のところは名前も言えなかったような子でね。それがあの子の名前かどうかもわからないんですけど、カーシャとだけ言うもんだからさ」「こいつはすげえや。まちが…