俳句・短歌 句集 2022.09.13 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第76回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 暮れぎはの空の群青どんど焼 朝市を一巡したる頬被 冬草やぽつかりと開く住居跡
小説 『約束のアンブレラ』 【新連載】 由野 寿和 ずぶ濡れのまま仁王立ちしている少女――「しずく」…今にも消えそうな声でそう少女は言った 二〇〇三年の年末。猛烈な雨が、差しているビニール傘を氷のように叩きつけている。静岡県藤市にある藤山を局地的な大雨が襲っていた。静岡県警の鳥谷(とりたに)は手に持っていた新聞を口でくわえると、慌ててしゃがみ込んだ。泥でぬかるんだ足元に、大量の水が靴を侵食する感覚が襲った。「こんな雨の中、こんなところにいたら風邪をひいてしまう。ここは危険な場所だ。お嬢さん、名前は?」少女はずぶ濡れのままその場に仁王…
小説 『約束のアンブレラ』 【第9回】 由野 寿和 キャンパスから駿河湾が一望できる被害者女性の出身大学の教授に聞き込み捜査へ エンジンをかけて白い煙を出すと、三好和希は紫藤美術大学に向かって車を走らせた。静岡中央駅から車で二十分ほどの場所にある。緑豊かな山間部に位置する坂の上にあり、キャンパスからは駿河湾が一望できる絶好のロケーションである。紫藤美術大学は、静岡県内で唯一の美術大学であり、その質の高い教育と独創性に富むカリキュラムで、東日本でも有名な美術教育機関だ。絵画、彫刻、デザイン、映像、ファッションなど、広範囲に…