俳句・短歌 句集 2022.09.30 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【最終回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 暮れぎはの空の群青どんど焼 朝市を一巡したる頬被 冬草やぽつかりと開く住居跡
小説 『泥の中で咲け[文庫改訂版]』 【第7回】 松谷 美善 母さんが死んで、一人で生きていかなければならなくなった。高校中退後、月6万円での生活。お墓も作れず母さんの骨と一緒に暮らした 一日中、使いっぱしりをして、クタクタになって部屋にたどり着き、買ってあった少しの菓子を貪り食うのもそこそこに、重たい泥のようになって、布団代わりの寝袋に潜り込む。小さい頃から運動習慣のなかった俺には毎日が、筋肉痛が出るほどキツかった。毎朝、四時に目覚ましをかけて、まだ眠くてフラフラしながら起きる。風呂のついている部屋は、最初からはもらえない。申し訳程度についた小さなキッチンの流し台で、頭を洗って…
小説 『サトゥルヌス[注目連載ピックアップ]』 【第14回】 花田 由美子 最期に顔見ることも許されなかった。遺された子供の父親なのに、「ご本人の意思で、今の姿を見られたくない、」と。 【前回の記事を読む】鋭い声が聞こえ、隣の部屋の前に警察が…母親は連行され、子供の行き先は「多分、施設」孝一は透明なゴミ袋の中、オレンジ色のボックスに気がついた。ナオちゃんが化粧品を入れていた。思わず、袋から取り出した。鍵はダイヤル式。四桁の暗証番号は変えていなければ俺の誕生日だ。ナオちゃんが決めた。ダイヤルは四つの数字に反応した。開けると、裏返しにした写真と小さい本が水色のリボンで括られ一番上に…