【前回の記事を読む】何もかも前例がない…単位制高校の新設に向け手探りの苦労
定員割れの学年主任として
~「後ろ指を指させない!」を合言葉に~
私は4年間のキャリアガイダンス部を経て、学年に入ることとなった。
校長からは、教務主任を強く勧められていた。教務部は、初任時に入選業務を担当しただけでほぼ未知数であったので固辞した。ならば、学年主任を、ということで決まった次第である。
この学年はスタート時点から難題を抱えていた。それは入試で定員割れをしてしまった学年だからだ。
定員割れとは、どういうことを意味するのか。
都の規定では、「募集定員に達しなければ、受検者の能力の如何に関わらず全員を合格者とする」となっている。つまり、入試で定員割れとなった学校は、一次募集受検者を学力検査の得点に関係なく全員合格させ、さらに、定員に満たない分を、二次募集、三次募集等を行い、受検者を定員に達するまで受け入れるということだ。
したがって、当該学年は、学力差のある様々な生徒を抱えることとなっていた。
「定員割れ」「全入(全員入学)」の弊害は、一つに生徒の意識、モラール(士気)に影響することでもあった。
何かにつけ、「どうせ、俺たちは(定員割れの学年だ)」と卑屈になる。そしてそのことが、逃げの口実にも使われ、負のスパイラルが始まるのである。
そんな中で、彼らを受け入れる新学年団が〝小さな希望〟と〝大きな不安〟を抱えて発足した。学年団のメンバーは、国語科のM教諭、数学科のS教諭、体育科のA教諭、英語科のK教諭とW教諭、そして地歴科の私の〝六人衆〟であった。
この学年が最初に取り組もうとしたのが、「学力向上への取り組み」だった。
定員割れの学年の一般的傾向として、上位層と下位層の学力差が激しいことがあげられる。そのために、始業前の「朝学習」、そしてSHRでの「5分間ドリル」を継続的に行い、基礎学力を身に付けさせる。
さらにモラールアップを図るために、定期考査や模擬試験、5分間ドリルの結果など様々な取り組みの成果を学年掲示板に張り出し表彰していく。そして、頑張った者にはどんどん〝光〟を当てて、学年全体の士気高揚を図る、というものだった。
さて、その試みを職員会議に提案したところ、当該学年以外の全教員から猛反発を買うこととなった。
まず朝学習については、「誰が面倒を見るのか?」「朝早くから生徒を登校させて、もし事故が起きたら誰が責任をとるのか?」。
成績優秀者の掲示では、「個人のプライバシーの侵害だ!」「生徒を競わせて、いじめが起きたらどうするのか?」「優秀者を張り出してどれほどの効果があるのか?」「このような勝手な取り組みを前例にしないで欲しい!」など、散々だった。
私からしてみれば、開いた口が塞がらない、あきれてものが言えない、そんな心境であった。
このままでは、我々学年の折角の試みも、学年外の部外者によって踏みにじられてしまうと思った私は、「学校の責任者は校長であるから、最終的には校長に決めてもらう」と主張し、反対派を押しのけ、何とか〝中央突破〟を図った。しかし、現実は厳しく、事はそう簡単には進まなかった。