【前回の記事を読む】「ぐうの音も出ない」窃盗、恐喝、暴行…生徒たちの素行不良に、教育庁指導部から言われた衝撃の一言

全国大会優勝 ~彼らのもてるエネルギーを良き方向に~

彼らの唯一の拠り所はサッカー部であり、そして彼らの学校生活のすべてがサッカーだった。彼らは授業には殆ど出席せず、部活動の始まる午後9時過ぎ頃になると、どこからともなくやってきてメンツがそろう。そのうち少年院、鑑別所などの経験を持つものがリーダー格となり、“組織”を束ねていた。

彼らは試合の対戦相手に対し、しばしば暴行をはたらき、出場停止処分を食らうこともあったが、その年の試合では、ガンを飛ばして突き進み、あれよあれよという間に全国大会までいってしまった。それどころか、なんと優勝杯までも手に入れてしまうという快挙!? を成し遂げた。

あれは、忘れもしない、全国大会の決勝戦の日。場所は静岡の清水エスパルス本拠地「IAIスタジアム日本平(日本平運動公園球技場)」。私は学校側責任者として応援席にいた。

彼らは決勝戦といえども全く怯むことなく、例によって例の如く、ガンを飛ばしながら、相手校を攻めて、攻めて、攻めまくり、完勝した。そして、彼らは優勝旗を掲げて凱旋し、学校はもとより、地元のヒーローとなった。

そうこうしているうちに、私は望まなかったが、話がどんどん大きくなって区長表敬訪問と相成った。なぜか校長は、その任を副校長の私に命じた。そんな訳で、彼らを引率することになったが、この時の“情景”を想像してみてもらいたい。

先にも触れた通り、彼らはその道では名うての連中で、髪は茶髪で、ガタイもいかつかった。校長が私に行かせたのも想像に難くない。私は部活顧問を通して身なりをきちんとし、“普段と違う格好!?” をしてきて欲しい。そして、何を聞かれても黙っていること。受け答えはすべて副校長の私がすることなどを事前に徹底した。

こうして、無事!? 表敬訪問が終わった。ちなみに、私の校長選考の論文テーマは、この連中のエネルギーのベクトルをよき方向に向けさせ、学校を立て直す方策を述べたものだった。