夢標
あなたもどこかで走っているんだと
そう思うと 強くなれた
あなたを探し当てる前に
私の道を見つけよう
少しずつ遠くまで見えてきた
私が選んだ道にきっと
あなたが待ってくれている
そしてまたきっと
私を照らしてくれる
間違ってないかな
幸せになれるかな
夢の道は冒険のように
私をはげましてくれる
力強く進もう
夢標
こっちだよって
笑ってはしゃいで
照れながら
こっちだよって
信じています
ずっとずっと
足跡は
きっとまた誰かの
夢標
あなたを信じて
必ずいつか
会いに行きます
夢標
夢標の書き直しが思い通りにいかない。思い通りと言うと語弊がある。望風は、完全に行き詰っていた。自分を幼稚だとか稚拙であると責めた。どんな曲にしたいかわからなくなっていた。でも、悲劇のヒロインぶるつもりはない。一刻も早く、一分でも早く、夢標を完成させて日向に見てもらいたかった。期待に応えたかった。望風はまた表情を凛とさせて、もう一度夢標と向き合った。
望風は、作品と向き合う度に思う、なぜこんなに覚悟がいるのか。なぜこんなに力を使うのか。言葉を探って探ってたどり着くまで、とても力を使う。たどり着いたところが、素直の根源みたいなところなら、普段かなり偽物の鎧を着ていることになる。もっと素直に生きられたら……、作品をつくることも、こんなに苦しくないのかもしれない。
焦れば焦るほど、わかる。何を伝えたいのか定まっていないことが。夜も更ける頃だったが、望風は、奏多へ向かった。ひとりきりで自分と向き合うには、いい月夜だった。思い出してしまう。日向との時間を。作品作りに集中したいのに。
でも望風はわかっていた。詩を書くときは、自分の一番素直なときでなければならない。日向のことも、自分と素直に向き合うしかなかった。そう思った瞬間、夢標のイメージが動き出す。静止画のように、停まったまま動かなかったのに、再生が始まる。