【前回の記事を読む】あり得ないもの見たとき、認識が遅くなる脳の仕組みとは?

道路への飛び出しのときの視覚

ここで、車を運転中の少年の飛び出しに対する反応についてですが、リベットは、皮膚感覚が500ミリ秒程度たってからでないと生じないという知見から、(仮に時速50キロメートルで)運転中の人が、少年が飛び出したのを見てブレーキを踏んで車を止めたと表現したとしても、少年が飛び出してから、それが見えるまでに500ミリ秒程度かかるとすると、その間に6~7メートル進んでしまうこととなり、それからブレーキを踏むとなるとかなり進んでしまってからでないと車は止まらないことから、実際には、まずブレーキを踏んだあとで、500ミリ秒後に少年が見えたという知覚体験が生じたのだという意味の記載をしています。

私の視覚経験、運転中でのこと

また私の経験ですが、細い道を車で運転中に、対向車とぶつかりそうになったときのことをお話しいたします。細い道で、右に大きくカーブしていて、道路の右側は林のように草木が茂っていて、先が見通せない状況で走っていましたが、そのとき急に目の前に対向車が現れたのです(対向車との距離は10メートルくらいでしょうか)。

その際の私の車と対向車との相対速度は約60~80キロメートル/時くらいと思われました。私はとっさにブレーキを踏み、回避するためハンドルを左に回して、対向車とすれちがったのですが、このときに私が見たことを、忠実に思い出してみますと、まず目の前に何かが影のように急に現れ、その形は、何となく輪郭と、前面付近の構造が、いわば手書きの黒い線のように不完全なものに見え、これが見えたのとほとんど同時に、私はすでにブレーキを踏み、ハンドルを左に回していました。

次の瞬間、対向車は、私の車の右側を通っていて、すれちがう瞬間でしたが、このときには、車としての形状もわかり、色もついて見えたと思います(このときは、右側を通る対向車を周辺視でとらえていたと思います。対向車が何色だったかは忘れました)。