この経験から自分なりに、はじめに対向車が目の前に現れて、まだはっきりとは(明瞭には)見えていない状態でブレーキを踏んでハンドルを回したのが、対向車が現れたように感じてから150~200ミリ秒程度だったのではないかと思っています。また、対向車が右側ですれちがうときには、500~600ミリ秒から1秒くらいたっていたように思います。
ここで、最初に対向車が現れたときに見えた瞬間の映像は、その構造が線で描かれたような感じだったのですが、いかにもこれはV1での知覚を反映しているように思われました(V1ではさまざまな傾きの線分を認識する細胞が並んでいるとのことですので、ここでの認識を考えるならば、いわば形状を線で表現したような印象となるのではないかと思っています)。
だとしますと、この瞬間にV1付近での視覚映像が見えたということなのかと考えられるようにも思います。このことに関しては、「危険を感じた瞬間に物事がスローモーションに見える」という現象が考えられます。これは、危険を感じると時間精度が上がり、同じ時間でも長く感じられるというものです。
つまり、脳の情報処理のスピードがアップし、必要な状況をすばやく認識し、瞬時にとるべき行動を判断できるということではないかと思います。つまり、この際、視覚の機能は自動的に外界の刺激をとらえているはずですが、情報処理過程の早い段階での視覚映像が認識、知覚され、瞬時にブレーキを踏む行動につながるということとなるのです。
ものすごくせっぱくしているような、瞬間的にたいへんあせっているような状況の際に、一瞬の時間がとても長く感じられることがあるように思います。このように時間経過の認識が、主観的な側面をもっているといわれています。
この際、脳の働きが活発になって、情報処理が速くなり、思考が速く展開するために、同じ時間でも相対的に時間経過としては長く感じられる(外界のできごとが遅く感じられる)ということではないかと思われます。