まとめと今後の課題
以上、ここまでの検討結果のうち重要だと思われる事項を中心にまとめてみよう。
・検討対象となった受講登録者489名をクラスター分析を行った結果、『ランキング調査』『希望調査』の少なくとも1つに回答した第1クラスターと、両方とも回答しなかった第2クラスターに分類される。
・第1クラスターについて相関分析を行った結果、『希望調査』第1希望と基本演習に正の相関が認められる以外はほとんど相関が見られない。
・追跡調査を行った結果、バラバラなコース選択をした〈放浪群〉は対象学生の10%に過ぎず、その倍以上(22.3%)の学生は〈一貫群〉として『希望調査』以降同じコース選択ができている。
ちなみに、図表1~4において専門演習に所属しなかった学生は90名(19.0%)だった。これと〈一貫群〉の割合を踏まえると、今回調査した受講登録者にいわゆる2・6・2の法則が成り立つ様子が見えてくる。
この法則は、長期間にわたるアリの観察の中で、2割程度のアリが働いているとはみなせない行動をしているという2・8の法則からの派生と言われている。この法則の驚くべきことは、アリを個体識別した上で働きぶりを観察し、「働き者」ばかりのコロニーと「サボり者」ばかりのコロニーを人工的に作って観察を続けると、そこからやはり2:8の割合で働き者とサボり者に分かれるという※1。
もちろん、社会性生物であるアリの生態が人間社会にそのまま適応できるかどうかは更なる検討が必要である。とはいえ、本章の分析対象である学生のコース選択行動において、「カリキュラムシステムの主旨を理解してすいすい動く」〈一貫群〉が2割、「あの手この手で刺激を与えても逃げて」専門演習に所属しない学生が2割それぞれいた。こう理解できるかもしれない。
すると、残りの290名が「何らかのきっかけがあれば動くかもしれない」学生群であると言える。このうち49名が〈放浪群〉に該当し、290名に占める割合が16.9%だった。つまり、この学生群の8割以上が〈一貫群〉とまでは行かないまでも、それなりの判断基準を持ってコース選択をしたと考えることができるだろう。