不安を感じたら、セロトニンを増やそう
私たちは、日々目の前に現れる選択肢の中から、どれかを選んで行動しています。何かを決断するには勇気が要りますし、実行するには体力も必要です。特に、国の行方を左右する政治の世界における決断・実行のプレッシャーは、想像もつかないほど大きなものといえるでしょう。その最たるものが国政でしょう。国の行方を決め、国民の生活を守るという総理大臣の仕事はとても誇らしく、やりがいのある仕事である反面、とてつもない不安との闘いなのだと感じます。
安倍晋三前総理大臣の女房役にして、牛若丸にとっての弁慶のような強力なボディーガードを務めた菅義偉前官房長官は、高い支持率で政権をスタートさせました。しかし、1年経ってもめどが立たない新型コロナウイルス感染症対策と、それにともなう外出自粛によって国民のいらだちが高まり、政権への不平・不満を耳にすることが増えました。こういう非常事態の時には、何をしても一定の批判はあるものでしょう。
何かを決めて実行する、ということにはとてつもない胆力を要するもので、批判を受ける菅総理の目から生気が失われつつあるような気がしてなりません。この本が出版される頃に菅政権が続いているかどうかは分かりませんが、志半ばで交代を余儀なくされた安倍前総理大臣の無念を晴らすためにも、菅総理にはがんばってほしいものだと思います。
時の権力者たちが国の行く末を決めるにあたっては、並々ならぬ精神力が必要だったのは、昔も今も変わりません。平安時代の日本では、そんな政治家の決断を陰陽師がサポートしていました。陰陽師はもともと朝廷における役職のひとつで、占いなどを担当する技官でした。ところが、やがて時の権力者たちに重用され、為政者たちが何かを決断する際に真っ先に相談する精神的な支柱となっていきます。
たとえば、陰陽師と結託した藤原時平がライバルの菅原道真を太宰府へ流刑とするなど、政府の要職の人事などにも大きく関わっていくことになるのです。このような例は、陰陽師以外にも神官や僧などに数多くみられます。これらはある意味直接的な対立を避けるためのガス抜きのような、洗練された仕組みだったのかもしれません。
しかし、私たち一人ひとりが何かを決断する際に、陰陽師に頼るわけにはいきません。自分だけで決めるとなると、「本当にこれでいいのか?」「他の選択肢のほうが良いのではないか?」などと考えて不安になってしまうかもしれません。そんな時こそ、私たちはもっと自分自身の決断に自信を持つべきだと思います。私たちが経験や知識をよりどころとして積み上げてきた判断は、それほど悪いものではないはずだからです。それでももし不安が払拭できないのであれば、不安を抑える方法を考えるというのも手です。
人間は脳内物質の一つであるセロトニンがきちんと分泌されていると不安を抑えられます。ですから、不安を感じる時には、なるべく多くのセロトニンを分泌させるようにすればいいのです。セロトニンの分泌を促す方法はいくつかあり、日光を浴びる、深呼吸をして腹式呼吸をする、ウォーキングなどの運動をする、きちんと食事を摂る、といったことが大切。誰でも、何かを決断したり、新たな何かを始めたり、あるいは逆に止めたりすることには少なからず不安を感じるものです。しかし、できるだけ自分自身の決断や判断を信じ、セロトニンを増やす努力をしながら、毎日を元気に過ごすように心がけましょう。