ふにゃふにゃした生き物は苦手、赤ん坊など大嫌い
病院は娘のカウンセリングをこちらに任せてくれるということだったので、娘は通院して身体面のケアを受けながら面接していくこととなった。
面接では、娘は毎回号泣して、その合間に、中間試験が気になる、レポートが自信がない、発表の準備ができないといったことを漏らすが、それ以外のことは口にしなかった。自分の目の前のことで精一杯という感じである。
ただ母について尋ねると、病院に一緒に来てくれるけどもう少し優しくしてほしい、わたしがこうだから迷惑をかけている、と答えた。また嬉しかったことを尋ねると、母に服を買ってもらった、病院の帰りにお茶を飲んだ、と母に関することをいつも話していた。
結局、試験前は勉強が忙しいという理由でカウンセリングは休みがちとなり、母も、娘が来ていないのに何であたしが行かないといけないんですか、と姿を見せなかった。試験が済むまではカウンセリングはお休みということのようである。
このままでは、カウンセリングが進まないどころか摂食障害が悪化する恐れがあるので、病院や大学の教員と連携を深めなくてはと思い、双方と連絡を密にしていたところ、娘が通う学科の助教から、最近顔色がひどく悪いような気がするという連絡があった。
そこで一目様子を見ようと時間割を聞いて大学まで足を運んだところ、助教が教室まで連れて行ってくれて、ちょうど授業が終わって教室から出てくる娘を見ることができた。
一目見るなり私は、小走りに廊下を人がいない方まで行き、病院の担当者に電話して、受診させて緊急に入院させられるか尋ねた。それくらい悪い顔色と体格であった。病院の担当者は、すぐに主治医と相談して可能な限り対応するから、まず受診させてくださいと言ってくれた。そして私はそのまますぐに母親に電話した。
〈今日大学に来てお嬢さんを見かけたところ、とても顔色が悪く、身体の様子も大変悪く見えます。すぐ病院に連れて行っていただけますか〉
「えっ、そんな急に言われても……」
〈病院には電話して、担当の方には伝えてありますから、お嬢さんを大学に迎えに来て、そのまま病院に行ってくださると助かります。急を要する状態だとお考えください。お嬢さんには助教の方から伝えてもらいます〉
母親との電話が終わると、呆気にとられて立っていた助教に深々と頭を下げて、どうもありがとうございました、おかげさまで何とか手遅れにならずに済むかもしれません、お母さんが迎えに来ると彼女に伝えていただけませんか、と伝えた。
その日遅くに母親から電話があり、主治医も一目見るなり即入院だということになり、それから手続きをしたり着替えを取りに戻ったり、てんてこ舞いだったと知らせてきた。
母親の口調は、どこかてきぱきとして、やることをやっているという感じであった。