ベルリンの再生

引き裂き空間の建物

リベスキンドが設計し、十七年前に完成したこの建物の外壁は、開口部が破砕されたスリット状で、胸に突き刺さる感触である。内装も従って、ねじ曲がった空間、ギザギザの窓が我々の心を引き裂く。ユダヤ人の気持の仮借ない表現。「ユダヤ人の子供はユダヤ人」「中小企業の社長の長男は概ね社長」。この現象は宿命なのか。

20世紀フランス実存哲学においては「不条理」(ヤスパースの体験したような境地)。仏教ではさらりと「縁」と表現する。ユダヤ教徒は許さない。引き裂きの空間の建物は、怨念で自分を苦しめている姿に見える。心重く建物を去る。

夕刻。賑やかなベルリン祭へ行き気分転換した。屋台と人込み。カイザー・ウィルヘルム教会のモダンな祭壇を見て、外へ出ると凄いパフォーマンス。教会の脇から三十階建てヨーロッパ・センター屋上までロープを掛け渡し、三人の美女を吊り下げてオートバイで登り切り、バックして戻ってくる。仰天するが、日本では安全条例で禁止だろう。

夕食はホテル近くの和食店「宝」で鮨など(31ユーロ)。

夜、TVでアテネ五輪を見る。ドイツのTVではやたらにボートと柔道が多いが、チラッと嬉しそうな谷亮子選手と日の丸が映り、彼女の優勝を察し喜ばしかった。