高齢者の心臓病を解説:心房細動
心房細動は、脈の乱れに法則性がないのが特徴で、さまざまな病気に併発しますが、高齢者に多く見られます。左心房に血栓を作り、それが剥離して脳梗塞を起こすことが大きな問題です。時に重篤な脳障害を起こすことから、抗凝固剤が投与されます。抗凝固剤はコントロールが必要で、食事にも制約があります。
だが最近になってカテーテルアブレーションという画期的な治療法が開発されました。心房細動は、肺静脈が左心房に入るところで刺激が発生することが判明し、その部位をカテーテルで焼灼して刺激を遮断するというものです。手技は少し複雑で適応には制約がありますが、現在は心房細動の治療に欠かせないものとなりました。
以上のように、さまざまな不整脈が電気的に解明され、それをカテーテルで対応できるというのは、現代に生きるものの大きな幸いにつながっているのです。不整脈は心電図で診断できるので、高齢者は年に一回は心電図検査を受けることが望ましいと思います。同時に自分の脈拍数と不整があるか否かも知っておくとよいでしょう。
やり方は朝、起床前などで、片方の母指球の手前を走る前腕の橈骨動脈を、親指と小指を除く三本の指で触診すればよいのです。自分の脈拍数をふだんから知っていると、何かにつけ便利です。私は、朝の心拍数が通常毎分六〇以下です。一般に高齢になると、脈拍数を増加させる機能が衰えてきます。身体運動にともなって脈拍数が自由に増加するのが困難となります。だから速く歩けません.老化現象のひとつです。
高齢者の心臓病を解説:弁膜症
医師は診察時に、聴診器でまず心音を聴取します。そのときに雑音があると、弁膜症を疑います。これは診察の基礎であり、時には心音図を取るというのが昔のやり方でした。しかし今では心エコー・ドプラー法で弁膜の動きや心臓内の血流の動向を詳しく知ることができるようになりました。循環器内科を標榜する医師にとっては、その習熟が欠かせません。
弁膜症の成因も、昔と今では、随分違ってきました。昔は、リウマチ性が多く、とくに僧帽弁狭窄は典型的なリウマチ性弁膜症でした。しかし今では、小児のリウマチ熱が激減し、適切に治療できるようになったのでリウマチ性弁膜症も減少しました。