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第二章 原点への回帰
第一節 故郷
そして、身を横たえてしばらくすると、亡霊のような白い浮遊物が暗闇の中に現われ、それがスピードを増しながら細かく分かれて飛びかい、最後、天井と共に落ちてきた恐怖の瞬間、私は死のうと思い、ナイフを探したが、真夜中のことでまごつき、夜明けを待つことにした。死ぬと決めると、少しく落ち着いて、涙が溢れた。
そして、手元にあったヘッセを夢中で読み飛ばし、疲れていつしか眠りに落ちていた。
夜が明けて目ざめた時、私は白日の下に、怖じ気づいていた。そして、そのまま死ぬのを先延ばしにしていった。その日の昼下がり、一歩一歩足を踏み外すような恐怖を覚えながら、何をなすともなく裏庭に出ると、不穏な情景を見ながら、独りホオズキの実をむしっては投げ続けた。その夜、廃墟の壁に自分の頭を打ち付けて血を流している夢を見た。
そして、目ざめて、どこか遠くへ行って、人知れず死ぬことを思った。こうして私の人生は希望に開かれた世界から、絶望に閉ざされた世界へと暗転していった。