欧州編 ヒルトンで朝食を

早朝の五時半、1日のティーの始まりには、夫が自ら沸かして紅茶を淹れる。たっぷりと注がれたミルクティーを飲みつつ、妻にも運んでから出勤する。それから午前八時頃に、2回目のお茶を朝食とともに勤務先で飲む。こうしてイギリスでは、寝るまでに1日10回のティータイムがあった。

これは今から80年ほど前に出版された名著『オール・アバウト・ティー』にある記述で、日本の奥様族がよく羨ましがる話だが、10時間労働がきまりであった頃のこと。

夫が淹れた紅茶はきっと美味しかったことだろうが、上流階級の「アフタヌーンティー」のマナーや、召使いに起床前のベッドサイドまで運ばせる「目覚めのティー」等の習慣へのあこがれが影響してか? 庶民階級にも徐々に広がり、紅茶が人々の暮らしに浸透したのだろう。

ところで私などは出勤前の慌しい時間の朝食を、楽しんでいる余裕などまず無く、起き抜けで食欲わかぬ寝ぼけ眼のまま、トースト1枚を黄色の定番ティーバッグをミルクティーにして何とか流し込む毎日。それも大抵は妻が淹れてくれるのを待っていられず、結局自分でポットを温め淹れている。まるで古き英国の伝統になっているではないか?

毎朝の余裕のなさに紅茶屋としての反省の意味も込め、今回はヨーロッパのホテルで、紅茶といえば思い浮かべるようなイメージどおり、ゆったりと優雅でおいしい時間をTea & Breakfastで楽しむことにしよう。