至高体験

H・Bさんは、

「プライベート出産は人生の中で一番気持ちが良い体験で、温かく守られ、つながるいのちの尊さを感じる体験となった」

と言い、C・Aさんは、

「子ども(胎児)の声に誘導されて出産し、子どもには無償の愛が湧き可愛くてしかたがない」

と言っています。そしてC・Dさんの夫は、

「脈々とつながるいのちのつながりを実感して両親やご先祖様に対する感謝の質が変わった」

と言います。

出産について、社会モデルの見方を重視するワーグナーは、

「出産は精神的および霊的な要素と一体となった生物学的な事象であり、本来女性的、直感的、性的、霊的なものである」

と言います。またアクティブ・バースを広めたオダンは、

「宗教的本能、つまり時間と空間を越えて、何か普遍的なものに属していると感じる世界観は、脳の最も古い構造、つまり、プライマル・ブレインの働きによるもので、それは普遍的で、どの文化にも存在する」

としています。

そして、宗教的感覚が頂点に達する状況の中に、「出産」を挙げ、その「最も極端なものが神秘的霊感による体験」であり、

「こういった体験から、人は宇宙の統一性と自身がその中にいること、平和や大きな愛を感じます」

と、出産体験における霊性の重要性を指摘しています。

自己超越して意識が変容する最高に至福な体験を「至高体験(peak-experience)」と名づけたマスローは、

「悟りや啓示や洞察といった偉大な神秘的経験や宗教経験を体験しやすいような仕方で子どもを産むのが一番良い」

と、心理学の立場で出産時の至高体験の重要性を指摘しています。

H・BさんやC・Aさんの出産体験は、オダンの言う霊的体験であり、H・Bさんの体験はマスローの「至高体験」と考えられます。

マスローは、さらに

「男性も、子どもの誕生から至高体験を得る方法、すなわち、物事の見方を変え、違った世界に生き、認識を変え、以後永久に幸福な生活を送る方向に向かって、何らかの行動を起こすことを、学ぶことができる」

と言いますが、プライベート出産に立会い、家族や親族への感謝の質が変わったというC・Dさんの夫も、プライベート出産を通して「至高体験」の機会を得たと言えるのではないでしょうか。