母子の愛着と家族の絆の強化
C・Aさんは、出産体験が母子の愛着形成につながったことを強調しています。
また、A・Cさん、C・Bさん、C・Dさんは、プライベート出産の選択にあたり、万が一の場合も想定して夫と十分な話し合いを重ねた上で出産に臨んでおり、プライベート出産が親子関係や夫婦関係など家族関係に影響する様子が窺えました。
インタビューでは、母乳哺育の詳細や育児不安などに関する聴き取りは行っていませんが、プライベート出産した子については皆母乳哺育を行っており、また、育児不安を訴える母親はいませんでした。生理的メカニズムによる母子の愛着形成がなされたと考えられます。
そして、H・Bさんは保健師から「虐待予備群」の扱いを受けたと言いますが、彼女らの中にそれに該当する状況は見受けられず、医療や行政側からの見方や対応方法の検討が必要と考えられました。
インタビュー協力者の夫は妊娠中の離別などを除くと27名で、そのうち一度もプライベート出産に立会っていないのは、体調不良で休んでいる間に出産となったH・Aさんの夫のみで、皆積極的に出産に関わっていました。
一般的な医療者の介助による出産での夫の立会いと、プライベート出産の夫の立会いには、出産にかかわる役割に大きな差異があることは言うまでもありません。
医療者の介助による出産での夫の立会いは、妻のそばに付き添い、出産の経過を見届け、子どもが生まれる様子を見学する程度であり、出産への参加として、子どもの父親としての主体的役割の多くは望めません。
しかし、プライベート出産は、妊娠中から夫婦間で相談し選択して行う出産です。父親は、出産の準備や出産時の対応など予め自分の役割を認識し出産に臨み、子どもを取り上げていました。
プライベート出産の決定には、夫のプライベート出産への理解が不可欠です。そして、互いを信頼し、自分たちの責任のもとに臨み、出産(子どもの誕生)を共有することによって、夫婦、家族の絆は強くなっていくのではないかと思われました。
C・Dさんの夫は、プライベート出産は自律した生き方につながり、さらにつながるいのちへの感謝の質が変わり、「家族の中で男(夫)の役割が明確になった」と言います。
プライベート出産は、女性の最も自律した出産であると同時に、家族の自律を促す出産であるとも言えるのではないでしょうか。