プライベート出産選択の動機から浮き彫りになる現代の出産環境
プライベート出産体験者の語りから、彼女らの出産観は、「出産を自然の営みとして捉え、医療介入を避け備わった力を発揮し産む」というものだとわかります。
そして、プライベート出産選択の動機は、大きく三つに分類できます。
一つ目は、より自律的に、より自由な出産を望み選択したというものです。
すべての出産をプライベート出産したA・Aさん、A・Hさんは、第1子を妊娠する前から出産観が確立しており、最初から医療に頼らず出産しようと考えていました。そして、その後もすべてプライベート出産しています。
C・Aさん、D・Aさん、H・Cさんは、プライベート出産する前に、開業助産師の立会いによる出産を経験しています。皆、一回一回の出産体験を通してさらに出産観が深まり、プライベートな環境で出産することが、より自分らしい自律的な出産につながると考え選択したようです。
二つ目は、妊婦健診や出産時に医療者と関わる中で医療不信に陥り、医療を避けたい思いが動機となったというものです。
A・Cさんは妊娠の説明の仕方に違和感を持ち、A・Fさんは自宅出産の希望に対して不安を煽られ、C・Eさんは受診拒否に遭いました。
C・Bさん、C・Cさん、C・Dさん、C・Eさん、D・Aさんたちは、出産時に、帝王切開術、会陰切開やクリステレル胎児圧出法、陣痛促進剤による分娩促進といった医療処置を受けました。
その中には、D・Aさんのように、できる限り医療介入を避けたい思いを伝えながら出産に臨んでも、会陰切開やクリステレル胎児圧出法は回避することができなかったという人もいれば、C・Dさんのように、自身があまり勉強することなく出産し、無知だったがゆえに陣痛促進剤を使用した出産となり後悔したという人もいます。
また、C・Bさんの帝王切開による出産は、一方的に手術の日時が決められました。納得のいくインフォームドコンセントの得られない中での医療介入により、心身ともに苦痛を強いられた経験が、プライベート出産の選択につながっていたのです。
三つ目は、開業助産師の立会いを望めない環境です。出産を自然の営みとしてとらえる出産観を持つ女性の多くがまず考えるのは、開業助産師の立会いによる助産所での出産や自宅出産です。
C・Cさん、C・Eさん、D・Aさんは、身近な場所に助産所がなく、開業助産師の立会いを望めないことがプライベート出産の選択に影響していました。C・Cさんは助産所に通いながらも遠方のため、陣痛が始まってから移動することへの負担の回避のため、間に合わず生まれてしまったことにしようと企てていました。