地獄一丁目(じごくいっちょうめ)・二丁目前(にちょうめまえ)

雨は次第に烈しさを増して、暗い空に稲光と烈しい雷鳴が聞こえます。そして硫黄の匂いが車内にも入って来きました。

青鬼「お前! さっきから下ばっかり見ているぞ。しっかり地獄四丁目を見ておきなさい」

私「はい、よくわかりました。ですが、もしあの人達と目が合ったらと……そう思いますと」

青鬼「馬鹿者‼ 目と目が合あってもお前とあいつ等とは世界が違うんだぞ。もし生まれ変わってもゴキブリかウジ虫みたいなものになると思うぞ。万一お前に危害を加えようとしたら俺が付いてる。俺がすぐ閻魔大王様のお力で奈落の底落としてもらうぞ」

私「わかりました」

そんなやりとりをしているうちに、ますます外の雨はどしゃぶりになり、車内に漂う硫黄の匂いも烈しさをまして参りました。そして遠いはずの三途の川から黄色い水の流れる音がゴウゴウと聞きこえます。突然青鬼さんが立ち上がりました。

青鬼「地獄四丁目前! 地獄四丁目前! 早く降りて下さい!」

と叫びました。車内は一瞬どよめく声が聞こえました。