NPO法人 日本過眠症患者協会代表 朝井さん
川崎 今回の対談相手の方は、クライネ・レビン症候群を抱えていて、NPO法人 日本過眠症患者協会の代表をされています朝井香子さんです。今回はよろしくお願いします。
朝井 よろしくお願いします。
川崎 さっそくなんですが、クライネ・レビン症候群ってあまり聞き慣れないんですが、どんな病気なんですか?
朝井 クライネ・レビン症候群は過眠症の一種なんです。一日二十時間くらい寝てしまう病相期が二週間くらい続き、それが終わると、まったく正常な病相間欠期を迎えます。この病相期を不定期に繰り返す病気です。
川崎 寝るのが二十時間以上ですか!? めちゃ長い時間寝ちゃうんですね。
朝井 そうなんですよ。しかも、病相期はただたくさん寝るだけでなく、様々な随伴症状があるんです。そして、この随伴症状が厄介なんです。私が一番困ったのは病相期のうつ状態からくる希死念慮ですね。死にたくてしょうがなかったんです。
川崎 クライネ・レビン症候群って睡眠時間が長くなるだけじゃないんだ。病気の症状で死にたくなるなんて……。
朝井 しかし、冷静な自分も共存していたので、なるべく周りに迷惑をかけず、自分が苦しまなくてすむような死に方を考えていました。その一方で、死んではいけないという理性も共存し、自分の中で感情と理性がぶつかり合い、死なないように努めるのがとても苦しいという不思議な状態が続いていました。
川崎 もはや僕の想像が追いついていないです。その感覚って簡単には共感されないですよね。だからこそ、人に頼りづらいというか、抱え込んでしまうというか……。
朝井 そういう面もありますね。また、クライネ・レビン症候群は病相期の記憶が無いことが多くありました。先ほどの経験だけはとても辛く長かったので、印象的で記憶に残っているのですが、他のことはあまり覚えていません。
川崎 記憶が無い? 起きていたことも、寝ていたことも? 生活する上でいろんなことで困るところが出てきそうですね。
朝井 はい、大学、大学院、職場、いずれも何日も無断で休みました。でも、その時の苦しさや、その後のこと等、ほとんど覚えていませんが……。病相期は学校にも職場にも行けないですし、何もできません。それなのに、社会保障は皆無なんです。