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ライブ

夏前に高校の文化祭があった。

隣接していた男子校と合同で開催され、生まれて初めて生ライブを見た。ボーカルのキラキラした汗、楽器の直の音とスピーカーからの音が混ざる感じ、そして心臓に響くドラムの音。現実のものとは思えなかった。

音楽に包まれている間はつらいことや嫌なことを考えなくてすんだ。その頃から折尾駅近くのデルソルというライブハウスに入り浸るようになる。

学校が終わるとそのままライブハウスに向かう。家とは逆の方向だったが、当時は定期券を駅員に見せるだけで駅から出られたので、駅の範囲は違ったが定期券をちらっと見せるだけで気づかれずにホームから出られた。

時々呼び止められることがあったが、すみません、と平謝りすればすぐに開放された。そんなことも続けば面倒になってくる。

そんな時、ちょうど都合がいいように私に嘘をついた友達がいた。どんな内容か覚えていないくらい些細なことだったように思う。その友達は遠方から来ており、折尾駅も自由に乗り降りできる定期券を持っていた。

私はその定期券で許してあげてもいいよ、と彼女を脅すと、すんなり交渉は成立した。

ライブハウスに通うようになり、何か楽器をやりたいと思うようになった。たまたま出入りしていたライブハウスにドラムの先生がいた。細身の女性で、町ですれ違ってもまさか彼女がドラムを叩くとは思わないだろう。

彼女が叩くスネアドラムの音は繊細であるのにもかかわらず、1つ1つの音が、心の奥底まで響き渡った。その日、私はドラムを習うことに決めた。

何ヶ月か続けたが、あまり上達しなかった。でもどうしてもライブがしたかったので、先輩にお願いし、黒崎のマーカスというライブハウスで1度だけ対バン(バンド大会みたいなもの)に出場した。

あまり練習できなかったし、到底うまいとは言えない内容だったが、最高の気分だった。ライブハウスの幻想的な雰囲気、匂い、音。今でも出場してよかったと思っている。

その時の対バンの優勝者は175Rで、うまさの次元が違った。プロデビューしたと聞いて、やっぱりな、と納得だった。