地獄一丁目(じごくいっちょうめ)・二丁目前(にちょうめまえ)
不倫者(ふりんしゃ)「俺(おれ)は何(なに)も悪(わる)いことなんかしてないぞ!」
青鬼(あおおに)「お前(まえ)はよくぬけぬけと平気(へいき)でいるな! お前(まえ)を信用(しんよう)し信頼(しんらい)していた奥(おく)さんを平気(へいき)で裏切(ぎ)って、それでも人間(にんげん)か!」
不倫者(ふりんしゃ)は黙(だま)って下(した)を向(む)いていました。
青鬼(あおおに)「すべてお前達(まえたち)の罪(つみ)の深(ふか)さは改心次第(かいしんしだい)だから、馬鹿(ばか)なことは二度(にど)とするなよ! さっさと降(お)りろ‼」
皆(みな)、しぶしぶ、ブツブツ言(い)いながら列車(れっしゃ)から降(お)りていきました。地獄一丁目駅前(じごくいっちょうめえきまえ)では二丁目(にちょうめ)の人達(ひとたち)も全員(ぜんいん)降(お)りました。
そして前面(ぜんめん)に見(み)える山(やま)の麓(ふもと)へと、ゾロゾロ歩(ある)いて行(い)きますが、よく見みると皆(みな)、素足(すあし)で小石(こいし)のゴロゴロとした道(みち)を、痛(いた)そうに歩(ある)いています。その山(やま)の裾(すそ)には、三途(さんず)の川(かわ)が流(なが)れていました。一丁目(いっちょうめ)から更(さら)に二丁目(にちょうめ)へは、もっと遠(とお)くへと全員素足(ぜんいんすあし)で歩(ある)くのです。
そしてまた、列車(れっしゃ)は音(おと)もなく静(しず)かに発車(はっしゃ)しました。私(わたし)は黙(だま)って赤(あか)ちゃんのいない元(もと)の席(せき)に座(すわ)り、ぼんやり窓(まど)の外(そと)を眺(なが)めておりましたが、外(そと)は霞(かすみ)がかかり、暗(くら)くてよく見(み)えません。
すると「やれやれ」と言(い)いながら、また青鬼(あおおに)さんが私(わたし)の隣(となり)に座(すわ)りました。