いや、今もその属性は、それほど変化していない。現に、今すぐうしろ向きにダッシュして、この場を逃げ出してしまいたいわたしがいる。
心の中で、おまじないを唱えるみたいに「平気、平気」とつぶやく。
どんなに他人の視線が痛くたって、わたしは平気。
そう、少しだけわたしは強くなった。ミュウと友だちでいるために。
ああ、それなのに―まったくもう! ほんと、なにやってんのよ、あの子は。人の気も知らないで。
落ちこみながら怒る、という複雑なわたしの心境を見てとったのかどうか、野長瀬さんが、「安心していいよ」と言いながら、ポンと肩をたたいた。
「これでもあたしらさ、ちゃあんときみらのこと、温かく見守ってんだから」
え……温かく見守るって……どういう意味だろう。なんとなく、手ごろな観察対象にする、という言葉に変換できそうだけど……。
「あ、ありがとうございます」
いったい、なにに対してお礼を言っているのか、わからないままペコリと頭をさげる。
そのままくるっときびすを返したわたしは、追いかけてくる視線を振りはらい、「平気、平気」とつぶやきながら自分の教室にもどった。