俳句・短歌 句集 2021.09.08 句集「八ヶ岳南麓」より三句 句集 八ヶ岳南麓 【第27回】 浅川 健一 八ヶ岳の麓で暮らす医師の、四季折々の俳句集 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 仁王立ちして白菜を剥いてゐる 葬列のゆるびてもどる冬田かな ぽつつりと焚殻生るる雪解かな
小説 『不確かな真実』 【新連載】 和亭 正彦 都内のマンションの一室で無残な姿で発見された女性の遺体。捜査本部は容疑者と思われる人物の特定を急ぐが… 凄惨な事件であった。新年早々の一月八日、新宿を起点として東京、神奈川を貫く東神電鉄の西城公園駅にほど近い瀟洒なマンションの一室から女性の遺体が発見された。遺体には、鈍器で殴られたような後頭部の陥没と胸部に致命傷になったと思われる数カ所の刺し傷があったが、傷はそれだけではなかった。大きく切り裂かれた腹部からは、まるで腑分けをしたかのように内臓の一部が体外に引きずり出されており、皮膚がめくれ返った首…
小説 『乙女椿の咲くころ[人気連載ピックアップ]』 【新連載】 倉田 裕美 その日、父親が初孫の顔を見に訪ねてくる約束だった――不安に駆られ母が実家を訪ねると辺り一帯の惨状に愕然となり… キッチンで八枚の豚肉に小麦粉、卵、パン粉と順に衣を纏わせながら、夕食の準備をしていたら、孫で三人兄弟の末っ子が小学校から帰ってきた。「おばあちゃん、ただいま」台所に顔を覗かせた。「今夜はトンカツなの?」前髪を揺らして小首をかしげ、弾む声で言った。ほとんど物音を立てない老人の生活の中に、たった一人の子供の声が混じっただけで、空気が一変し、生命感が溢れるのは不思議だ。「お帰り。今日はトンカツにするね…