北の別天地
釧路には、日本製紙と王子マテリアと二つの大きな製紙会社があり、それを中心とした工場地帯になっているために、市内には多くの飲食店が軒を並べています。そんななかでも、意外とそばで有名な店が多いのです。実は、道民でも知らない人がいますが、そばの収穫量日本一は北海道で、北海道には有名なそばの生産地があり、ブランドがあります。
市内にはかきそばの発祥といわれる店「玉川庵」があります。ミシュラン一つ星を獲得し、店は古民家の装いで風情があります。ふくよかで濃厚な大きな厚岸産カキがたっぷり入っていて、そばは太めで短めです。具はカキ、わかめ、ネギ、そばはコシがシッカリした田舎そばです。濃い目のそばつゆと具材を味わってください。ちなみに店主は厚岸でカキの養殖をされていてかきそばを考案されたようです。
「東家」の暖簾のそば店の起源で、明治から続く釧路の老舗「竹老園東家総本店」も有名です。
更科粉にクロレラを加えた緑色のやぶそばです。落ち着いた佇まいの外観、店内も純和風の趣深い店で美しい庭園もあります。
店の名物「かしわぬき(スープ)」「蘭切りそば」「茶そば」「そば寿司」をいただけるコースを注文しました。
「かしわぬき(スープ)」は聞きなれないメニューですが、かしわそばから麺を抜いたスープだけです。つなぎに卵黄を使った「蘭切りそば」は昭和29年釧路に昭和天皇陛下が宿泊されたさいに召し上がれて、おかわりを御所望されたとエピソードが残っています。「茶そば」は蘭切りそばに上質の抹茶を加えています。コースの最後に出てくる「そば寿司」のそばには甘酢で味付けされており、少しびっくりです。このコースはそばを堪能できます。
釧路繁華街のほぼ中心にある栄町平和公園近くの釧路ラーメンの店「河むら」はお気に入りです。削り節をベースに鶏ガラやタマネギを加えた透明で澄んだスープに、オリジナルの特注の細ちじれ麺を使用したラーメンは、何度食べても飽きないです。ラードと調味料は最低限にされているので、体に優しいヘルシーラーメンで女性や老人にはお薦めです。
店を切り盛りしているご主人は親しみ漂う団塊世代の雰囲気があり、店を去るときは、「ご馳走さま、また来年来ます」「お待ちしています」が合言葉になっています。この店の醤油ラーメンは通販でも地元土産店でも手に入ります。街のあちらこちらでそば屋やラーメン店を見つけることができるのでおいしい店を探すのも滞在中の楽しみです。
釧路における夜の定番グルメといえば「炉ばた焼き」がお薦めです。「炉ばた焼き」は、囲炉裏のような炉でとれたての魚介、肉、野菜などを焼き、「掘返べら」と呼ばれる長いしゃもじにのせて提供される料理です。数十年前は大阪でもこのスタイルの店が流行りましたがいまはほとんど見られません。
新鮮な魚介類はそのまま食べても十分おいしいですが、焼くことによってギュッと凝縮された旨みを堪能するのもたまりません。店先に並ぶいろいろな材料から好きなものを選び、それが囲炉裏で焼かれて供されるのは、食べる以外のわくわく感もあります。
居酒屋「炉ばた煉瓦」は釧路駅から徒歩10分、釧路フィッシャーマンズワーフMOOの前にあり、名前のとおり炉ばた焼きで知られています。明治末期に塩や穀物の倉庫として使われていた赤煉瓦造りの倉庫を改装した趣ある店内で釧路のご当地グルメが楽しめます。水産会社直営の店舗だけあって、新鮮な魚介がリーズナブルに堪能できます。