オカダカツミと「西の三悪人」
2期目、山内村長は選挙に負けた。村長下ろしを画策するオカダカツミ一派の暗躍を知りすぎていた私は、残念がる父に言葉もかけられなかった。
父は伝教大師の教えが残る園原を世に出そうとした。
父の弟の紹介で、H温泉ホテルAの会長ヤマダユキト氏と、父は三人で会ったようだ。
ヤマダ会長は園原の復興に協力することを快諾した。そして、熊谷哲観光課長を伴ったオカダカツミ新村長が園原にやってきた。
ヤマダ会長と、疑うことを知らない父は、神坂峠ふもとの薬師堂あらため廣拯院を比叡山延暦寺に連なる「信濃比叡」とする大いなる計画をオカダカツミ新村長にもちかけたのである。
ずっとわだかまっていた。数年前のあの日、父の事故を誰が飲酒運転としたのか。いつかは母方叔父のシブサワヒデフミに聞かなければならないと思っていた。その機会は思いがけなくやってきた。
「おいさま、あの日の様子、聞かせてもらえませんか?」
「ああ、あの日は飲んでいてなあ。息子の車に乗せてもらったが、お前の叔父(父方)にしか会ってないから何もわからんぞ」
「そう、警察にも会わなかった?」
「ああ、おらなんだぞ」
「帰ってきてツネオに電話しなかった? 酒を飲んでいたみたいだと言わなかった?」
「電話したよ。12時過ぎていたし、何を言ったか覚えてないが。そういえば、朝早くにマサオから電話がきたな」
「マサオの電話は6時のSBCニュースのあと? 前?」
「前さあ、5時頃だよ。なんで知ったのかわからなかったが、今考えるとツネオが電話したんだなあ」