誰が父を失脚させようとしたのか

父が事故を起こしたとき、私が不在だったため、母は父方叔父(父の弟)にも電話をかけたらしい。叔父が駆けつけたときには警察がいた。警察が帰って叔父だけのところに母方叔父(母の弟)が着いた。

叔父から連絡がないのに焦(じ)れた母が、母方叔父のシブサワヒデフミにも電話を入れたのだ。事故現場に駆けつけた両叔父も警察も父の姿を見ていない。妻も私も、眠っている父を見ただけ。

不思議な話である。

いったい誰が飲酒運転と断じたのか。なぜ、S新聞の記者は、いち早く事故について知ることができたのか。

妻は言った。記者から「阿智村教育長の家族ですか」と聞かれたと。匿名で警察に電話をした誰かは、S新聞にも電話をかけ、飲酒運転で父を失脚させようとしたのだ。なんのために?

事故から2年が過ぎ、父はその気がなかったが、推されて村会議員となり村政に復帰した。当時の村長は黒柳村長時代に助役を務めた山内康治氏。

父が議員になって最初にやったことは、村長職を狙うオカダカツミらによって追い込まれた山内村長を助けることだった。これには多くの議員が同調してくれた。山内村長の切実な思いは父もわかっていた。

その山内村長はS新聞の報道によって窮地に陥った。議場として建設計画のあった建物をコミュニティセンターに転用することが国庫補助金の不正受給に当たると、すっぱ抜かれたのである。

議場をコミュニティセンターとすれば、たしかに国庫補助金の不正受給に当たるかもしれない。ただ、S新聞は国が判断する前に不正受給と決めつけた。